屋台マックス (後編)





―――――――― 04 川の穴パニック ――――――――




 先日、大破したまま放置されていた自分の屋台を回収し、レンタル屋台にワイヤーロープでしっかりと括り付けると、目的地へと進路を変更する。
 その道中、何度か雑魚妖怪との戦闘になったが、車内からの遠隔操作による主砲・副砲の攻撃だけで十分事足りた。

 今ミスティアが通っている人里〜河童の集落までの区間は、特に危険度が低い。
 屋台の整備や、修理が出来る大規模な施設を持っている場所、というのはこの幻想郷でかなり限られてくる。一応、人里やその他の区域にも整備施設はあるが、やはり河童のそれとは比較にならない。
 それ故に幻想郷各地から一線級の屋台持ちやハンター達が頻繁に集い、往来しているのだ。これでは低級な妖怪なら、警戒して近寄らなくなるのも無理はない。

 しかし、だからと言って楽観視は出来ない。
 妖怪の山の、目と鼻の先でヤタイグラーが襲撃してくるとは思えないが、自分の力量も判別できない超低俗妖怪が数に物を言わせて大群で襲ってくる事もあるし、一回の戦闘で装甲タイルを何十枚と削ぎ落とす、力の強い妖怪と出くわす可能性もゼロではないからだ。

 それ故に油断は出来ない。
 時には襲ってきた妖怪達を鳥目にしたりして、周囲を警戒しながら慎重に進む。
 途中、ゴールドアントが出現した時は何としてでも仕留めたかったが、この屋台の装備では決定打を与えることは難しく、結局逃げられてしまった。
 一匹でも倒しておけば、一〜二週間は生活に困らないだけの獲得金が手に入っただけに、その点が実に残念でならない。



 そんな事をしているうちに河童の集落へと到着した。時刻はちょうど正午頃。自走式屋台は流石に楽で早い。ますます痺れる、憧れる。

 さて。河童が暮らす、河童の集落だからと言っても、本当に水中にある訳ではないのだが、誰が言い始めたのか『川の穴』という愛称を持ち、すでにそれが通称となってしまっている。
 住宅より工場や研究施設が多く、屋台の修理・整備から売買、そして改造までを手広く行っており、レンタル屋台や各種屋台装備も充実している、まさに屋台持ち憧れの聖地なのだ。

 道には牽引式から自走式まで、各種各様の屋台が往来しており、その中には戦台までが存在していた。
 そんな屋台に群がるように、商魂たくましい河童のエンジニアや人妖の商人達が声を張り上げている。

「中古から最新まで、各種Cユニットが揃っているよ!」
「撃ってビックリ、不発弾はいらんかね?」
「バーゲンだよ! 安いよ安いよ! 二割三割当たり前だよ!」

 とにかく、あっちを見てもこっちを見ても、もう屋台しか見えない。道幅は十分広いのに、屋台と商人が多すぎてちょっとした渋滞が発生している。
 ミスティアは停止するたびに声を掛けてくる商人達の誘いを断るのに、少々うんざりしながら目的の場所へと屋台を走らせた。


 そこは工場地区と住宅地区の中間ほどに位置する、河童の研究施設としては小型の部類に入るであろう建物の前。辺りには民家は少なく、河童の集落としてはかなり自然が残されている。
 車載の時計を見ると、町に到着してからここまでで30分は経っていた。本当に商人たちのエネルギーは凄まじい。

 というか河童って人見知りするんじゃなかったのか。
 確かに中には人見知りが激しい河童もいる……というより、そういう河童の方が多いだろう。しかし、やはりここにも幻想郷のヒエラルヒーはしっかりと働いているようで、研究・開発には多額のお金がかかる。何より研究者というものは、自分が作った発明品が実際にどれだけの性能・威力を発揮するか確認したいのだ。
 そんな訳で、自分の作った武器や道具を使ってくれる屋台持ちを探したり、研究の為のスポンサーを探したりと、河童は河童なりに大変なようだ。


 ミスティアは屋台から降り、その建物のチャイムを鳴らす。ピンポン、というお決まりの電子音が外まで聞こえてきた。
 ちなみに今はアイドリングはちゃんとストップ。燃料代も幻想郷環境にも優しいのだ。

「……あれ? 留守なのかな?」

 しん、と静まりかえる家。まったくの無反応に、ミスティアはもう一度チャイムを鳴らした。

「はーい、ちょっと待ってて……なんだ。みすちーじゃない」

 ドアを開けて気怠そうに出てきたのは河城にとり。ここは彼女の自宅兼工場なのだ。
 工場と言っても、ごく一般的にイメージするような、工作機械がゴンゴンと動いていたり、沢山の煙をもうもうと吐き出していたりする訳ではなく、どちらかといえば研究所に近い。
 外見上は人里で見かけるようなごく普通の木製民家と、ベトン(コンクリート)及び煉瓦を組み合わせて作られた小屋とが悪魔合体したような、ミスティアの感覚からすれば不思議な建物なのだが、河童の集落ではさして珍しいケースではない。

 どうやら、「自宅と工場が一緒ならスゲー便利じゃね?」という合理的精神に基づいて建てられているらしいが、融合配分を間違えているとしか思えない。もちろん、自宅と工場(または研究所)を別々に建てる河童もいるが、その比率は少ないだろう。
 そんなにとりの主な収入源は、屋台の修理や販売ではなく、新しい屋台装備の開発・研究による特許料らしい。

「なんだ、じゃないでしょ。それでまた何か休まずに研究してたの?」
「そうなの……新しい装備を開発してるんだけど、ちょっと行き詰まっててさあ。
 ふぁ〜あ」

 まるで吸血鬼のように太陽を眩しがりながら欠伸をしているにとり。よく見ると、目の下にうっすらと隈らしきものが見てとれる。徹夜でもしていたのだろうか。

「ふ〜ん。たまには休まないと体に毒だよ?」
「まあ分かってはいるんだけど、夢中になるとつい(徹夜を)やっちゃうんだ☆」
「そ、そう……」

 微妙にテンションがおかしいのは、徹夜明けだからだろうか。

「それで私に何の用? 何かあって来たんでしょ?
 ……あ! もしかして今の屋台の性能に満足出来なくなったとか?
 守備力強化? 弾倉増加? それとも穴タイプを変更しちゃう!?」
「はいはい、落ち着いて落ち着いて。
 実は屋台が大破してしちゃって……今日は修理を頼もうかと思ってきたんだけど、疲れているなら明日にでもまた来るよ」
「いや、せっかく来たんだし、一応見てみるよ」
「そう? ありがとう、にとり」
「何言ってるの、私とみすちーの(屋台との)仲じゃん」
「ん? あ、ありがとう?」

 にとりは数あるポケットの中から小さなリモコンを取り出すと、そのスイッチを押す。モーターや金属同士の掠れる摩擦音と共に、ガレージのシャッターが自動で開いていく。
 ガレージ内には、こんなの個人で持っているのか? と思うような大型のリモコン式クレーンや、床に埋め込まれた大型油圧ジャッキなどの様々な大型機械があるが、にとりに言わせるとこの程度の代物は河童なら大抵の家にはある、という事らしい。
 そのガレージは敷地面積だけなら、妖怪兎が100人乗っても大丈夫! な程度には広いが、各種工作機械がその三分の一ほどを占拠している。

 ガレージの奥には扉があり、ミスティアにもよく分からない機械で埋め尽くされた工作室がある。さらにその奥の扉の向こうには研究室があるというが、ミスティアはそこまでは足を踏み入れていないので、研究室とやらがどれだけ人外魔境の地なのかは全くの未知数だ。
 喋る脳みそや、培養液に入れられた死体などが置かれていない事を、友人として祈るのみである。


 ガレージ内に大破した屋台を入れると、レンタル屋台との牽引を解いた。レンタル屋台まではガレージに入りきらないので、表に停めておく。

「うわ……これは酷い……」

 ガレージに入れた屋台を一目見て、にとりは重く唸った。

「そんなに酷いの?」
「……うん。これはもう重体っていうレベルを超えて、もうご臨終レベルだよ」
「ええええぇぇぇ!?」

 確かに屋根が全損しているなど、屋台はかなり損傷してはいる。しかし、見た感じではまだ十分に修理可能に思えた。
 それでミスティアはまあ何とかなるだろう、と割と気楽に考えていたので、にとりの言葉はまさに予想外であった。

「まだ詳しく調べてみた訳じゃないけど、これはシャシーのフレームが完全に逝っちゃってると思う。
 人間に例えたら全身複雑骨折みたいなものだよ」
「そ、そんな……! 何とかならないの!?」
「う〜ん。かなり難しいとしか言いようがない。それに、仮に修理できても以前ほどの性能は絶対に出せないよ?
 それならいっその事、新しい屋台を買うなり作るなりした方が――」

 あれ? なんだか……目の前が……暗く……。
 河童って、相手を鳥目にする程度の能力って、持ってたっけ……?

「みすちー? ちょっと、みすちー!
 大丈夫!? 凄く顔色悪いけど!?」

 うん、もう駄目かも。

「そうだ、これに座ってて!
 今、お茶でも持ってくるから!」

 急いでにとりが自宅からお茶の入ったポッドを持ってきた時、パイプ椅子に座ったままミスティアは真っ白に燃え尽きていた。

「みすちぃぃぃぃ――――――――!!」

 にとりの悲しげな叫び声がガレージ内に木霊する。
 夜雀は、焼かれなくても灰になれるのだ……。




 その後、にとりが屋台を点検している間に、なんとか復活したミスティアはレンタル屋台を返却しに行く事にした。
 レンタル屋台の支部は幻想郷の各地にあり、レンタルした屋台は支部・支店のどこで屋台を返却してもOK、という非常に便利かつありがたいシステムである。
 だからこの川の穴のレンタル屋台に、香霖堂で借りた屋台を返却しても何も問題はないし、専用の業者により数日の内に香霖堂へと移送されるであろう。もちろん、面倒な手続きなんて要らない。

「みすちー、ちょっと言いにくいんだけど……いや、ここはちゃんと本当のことを言うべきね」

 レンタル屋台から帰ってきたミスティアは、深刻そうな顔をしているにとりの様子に一抹所ではない不安を覚えた。

「え? ど、どういう事?」
「うーん、なんというか……修理は無理」
「な、なんでよ!?」
「ちょ、みすちー、苦しい苦しい!」

 納得のいかないミスティアはにとりに詰め寄ったが、つい熱が入りすぎて無意識のうちに、にとりの襟首をかなり強く掴んでしまっていた。

「あ、ご、ごめん……」

 その事に気付いたミスティアは、慌ててにとりから離れるが、にとりはゲホゲホとむせてしまっている。

「まったく……今から説明するから、落ち着いてよーく聞いてね」
「う、うん」
「まずこれがみすちーの屋台の状況なんだけど……」



夜雀号
 装甲タイル:0/155
 シャシー:リヤカー(ロングタイプ)【大破】
 主砲:40_自動擲弾銃【大破】
 副砲:7.7_機銃【大破】
 Cユニット:NITORI−T11改【小破】
 エンジン:本人
 SE:ATMミサイル【正常】(残弾なし)
 道具:汎用調理台【大破】



「まず、主砲と副砲、それにCユニットは要交換ね」
「え!? Cユニットは小破だし、一応動いていたよ!?」
「思い出してよ。屋台を作るときに言ったでしょ? このCユニットは旧式なの。だからもう補修部品がないのよ」
「あ……そう言えば……」

 以前、にとりに屋台を作ってもらう時、有り金をすべてはたき、なおかつ32回ローンにしてもらったが、それでもまだお金が足りなかった。
 そこで中古部品を多く使う事で、なんとかお金が予算額内で落ち着いたのである。

 ちなみにATMミサイルは、にとりが何処か(口を割らない辺りが怪しすぎる)で拾ってきた部品に、これまた屑鉄同然の部品と掛け合わせて作ったという代物で、ランチャー部分はなんと水道管である。
 しかし、重要なのはランチャーではなくミサイル本体で、にとりいわく「1q以内なら、全力飛行する天狗をも理論上撃墜可能」というとんでもない性能で、そのプロトタイプだという。

 ミサイルの値段を聞いてみると、あまりの高額に「そんなに払えない」と一度は断ったのだが、プロトタイプなので初回は特別に格安にしてくれた。ただし、もし使う機会があればその結果を報告をして欲しいとのこと。
 それならば、とミスティアは快く……もないが、一応引き受けたのである。その時は「どーせ使わないんだし」と思っていたのであるが。

「まあ、SEは一旦置いておくとして…………あっ、そう言えばミサイルの性能はどうだった? 詳しく聞きたいんだけど」
「え? えーと、まあ凄かったよ。一撃で蓬莱人二人を撃墜しちゃったし」
「むふふ、そーでしょう!?
 何しろあれは私の自信作でね、外の世界の書物を参考にして、これまでにない誘導装置の小型化に成功して…………」
「あー。にとり、にとり」
「ん?」
「気持ちよく説明してる所悪いんだけど、ミサイルより屋台の事を先に説明してくれないかな?」
「あはは、ごめんごめん。
 どこまで話したっけ……え〜と、確かCユニットも交換必要で、SEはしばらく放置という所までで良かったかな?」
「うん」
「ついでだから言っておくけど、主砲や副砲も銃身及び内部機械を全取っ替えの状態だから、程度の良い中古品でも買った方がずっと安上がりだよ。
 調理用の器具もほとんど全損。これも全部修理すると結局高くついちゃう。まあ、これは中古品で十分代用がきくから調理器具関係はそれでいくとして……問題なのはやはりシャシーだね」
「そんなに酷いの?」
「酷いなんてもんじゃない。完全にオシャカだよ。
 もし修理するとしたら、屋根を総取り替え。ついでボディー外周もほとんど総取り替え。ここからが重要だけど、シャシーのフレームも全損しているから、これも総取り替え。
 結論。シャシーの90%近くの部品が、交換か修理が必要」
「90%って、ほとんど全取っ替えじゃない!?」
「うん。それぐらいなら新車を買った方が得だよね?
 ちなみに、もし修理しようとしたら費用は1500円ぐらいかかっちゃうよ」
「せっ、千……」

 高い、高すぎる! 牽引式の屋台が新品で約3500円〜5000円前後、中古品で2000円〜2500円前後だから、もう少し追銭したら程度の良い中古の屋台がまんま買えてしまう!
 しかもそれは純粋な修理費のみ。屋台が直ったとしても、そこに装甲タイルを貼り、弾薬と食材を補充して、元通りの屋台経営が出来るまでの費用は計上されていない。

「――それで、予算はどれくらいなの?」
「だいたい1100円ぐらい……」

 ちなみに内訳は、蓬莱人たちが払った修理費が600円、自分の貯金が500円だ。さらに余談だが、これは博麗神社で軽く数十回は宴会を開ける金額である。もちろん全奢りで、だ。

「うーん。
 それなら、中古のショートタイプのシャシーに中古の調理器具を乗っけて……中古のCユニットに中古の副砲を装備したとして……なんとかそれぐらいに収まるかなぁ。
 でもそれは純粋な屋台だけの値段だし……」
「そうだよ! 予算の金額って、私の全財産なんだよ。だから、全部使ったら食材も買えないし、強制断食の毎日だよ!」
「おまけにまだローンも残ってたよね。確か5回くらいだっけ?
 まあ、これはしばらく延期してあげるよ。流石に今のみすちーから取る気になれないしね」
「ありがとう、にとり!」

 にとりこそ心の親友だ!

「いいってことよ。
 その代わり、今新しいSEを開発しているんだけど、ぜひそのモニターになってほしいんだ」

 ……あれ? 私とにとりは心の親友の筈だよね?

「う、うん……別にいいけど……肝心の屋台がなかったらどうにもならないよ?」
「それもそうだけど」

 その後、ミスティアはにとりと別れて少し町を歩くことにした。もしかしたら中古品で、掘り出し物の屋台があるかもしれない。
 にとりは自宅に残り、可能な限りコストダウンできる方法を考えてみる、との事だった。




 ミスティアは足を棒にして夕方頃まで歩き回り、複数の中古車屋を回った。だが、結論から言ってしまえば、そんな都合の良い中古屋台なんてなかったのである。
 欲しければオーダーメイド、なければ中古で我慢が常識とはいえ、もう少し自分の『許容範囲』に収まった物があるかと思っていたのは、やはり見通しが甘かったのだろう。

「やっぱり、レンタル屋台でチマチマ稼ぐしかないかなぁ」

 でも、売上金の大部分をレンタル料で取られちゃうしなぁ。食材の購入費を考えたら手元に残るお金は微々たるものだよ。
 実際、八目鰻を食べに来てくれるのは大体常連さんだし、それほど儲かってる訳じゃないんだよね……。

 元々は趣味で始めた屋台。売り上げも特に気にはしていなかった。だが、口コミで噂が広がり固定客も付き始めると、少しずつ状況が変わってきた。
 顧客が増えていくほど、ミスティアの中に『屋台の女将』としてのある種の“誇り”が芽生え始めてきたのである。同時に、それは味やサービスの改善という結果をもたらした。
 多少高くても良い食材を購入し、以前と変わらぬ値段で提供する。たとえ多少の手間がかかっても、顧客のニーズに出来る限り応えたい、というのが信条だった。
 その結果、そこそこの評判は立ったと自負するが、利益率という点では失格かもしれない。

「だけど、今更品質を落として利益率を上げるのもなぁ……」

 だいたい、そんな事をしたら固定客ですら離れていってしまうだろう。

 もうちょっと修理費をふんだくっておけば良かった、と思いながらもそんな事は不可能だと考え直す。
 そもそも、あの額の修理費で間に合うだろうと、安易に思い込んだ自分にも非がない訳でもないのだから。



 今夜の宿について、ミスティアはホテルに泊まろうと思っていたし、にとりに対しそうは言ったのだが、家に泊まっていけと半ば強引に誘ってくれたので、その言葉に甘える事にした。
 実際問題として、ホテル代でも節約出来たのはありがたかったし。

 にとりの用意してくれた河童巻きや胡瓜の和え物、胡瓜の味噌汁といった『典型的な河童食』を食べながら、ミスティアとにとりは今後の方針を話し合う。

「それにしてもさ、みすちーって人が良すぎるよ」
「そうかな?」
「普通、屋台を壊されたら怒り心頭だよ。よくそこまでされて黙っていられるね」
「じゃあさ、にとりは蓬莱人二人とそれぞれの付添人相手に、ガツンと言える?」

 ミスティアの言葉に、にとりはうーんと考え込むが「……ごめん、無理」と片手を振った。

「でしょ?」

 にとりもそこまでの上位妖怪ではない。それら蓬莱人とその関係者四人のうち、一対一でも勝ちを拾える可能性が極めて僅少であるのは、ミスティアと同様であった。

「まあ、それはともかくこれからどうするの?」
「……どうしようか?」
「考えてないの?」
「……うん」

 その言葉の後、交わされる会話もなくなり、沈黙した空気が食卓を重く覆う。

「……みすちー、箸が止めってるよ?」
「うん、ちょっと食欲がなくて」

 なんとか言葉を発して現状を打開しようとしたにとりだが、その重い空気を払拭する事は出来なかった。
 そこでにとりは、今のミスティアに必要な物は何かと考えたが、果たして“それ”を口に出して良いものか、しばらく己の中で逡巡した。

「……ねえ、みすちー」
「うん」
「どうしても屋台が欲しい?」
「屋台はもう、私の生き甲斐だからね。それを手に入れられるのなら、犯罪以外の何だってするよ」

 にとりは読心術が使える訳ではないが、ミスティアのその言葉が嘘ではないと確信できた。
 どんな事であろうと、生き甲斐を奪われてモチベーションを保てる訳がない。新たな生き甲斐を見出せなければ、それまでの生き甲斐にすがるしかないのだ。
 犯罪はしないと言ったが、目の前にそれをぶら下げられた時、果たして迷いを振り切れるだけの心の強さを有しているか。にとりはミスティアの立場を自分に置き換えて考えた時、何も言えなかった。

「みすちー」
「なに?」
「今から言う事は噂の域を出ないし、眉唾ものだし、はっきり言って今のみすちーには酷な内容かもしれない。けど怒らないで聞いて欲しいんだ」
「……うん」

 そう前置きしたにとりは真剣な口調で話し始めるが、その内容はにわかには信じがたいものであった。そもそもミスティアは何故にとりが今この時、このような話を始めるのか、その理由が解らずにいた。

「みすちーは伝説の屋台の話、信じてる?」
「伝説の屋台? ああ、幾つか話は知ってるけど全部嘘なんでしょ?」
「うん。ほとんどの伝承やら噂話は、所詮その域を出ない。
 ……けれど」
「けれど?」
「この『川の穴』にもそんな『伝承』が幾つかあってね。その中の一つに、この川の穴から南東へ行った先にある洞窟に屋台があるっていう話があるんだ」
「……それって本当?」
「うん。話だけは。
 この話を信じた連中は、今まで何十人、何百人といたんだ。でも結局は見つけられなかった。膨大な年月と調査費と、何人もの命を使ってもね。
 後に残ったのは、掘り返された洞窟と破壊された自然環境だけ」
「なんだ、結局何もなかったんじゃん。……それでにとりは何が言いたいの?」

 にとりの意図が掴めないミスティアは、そのせいか口調がつい厳しくなる。

「怒らずに聞いて。この話には続きがあるんだ」
「続き?」
「ねえ、みすちーは『赤い屋台』って知ってる?
 紅く塗られた戦台を駆る、伝説の赤い屋台、通称『レッドドラゴン』の話を」
「赤い屋台、レッドドラゴン……?」

 突然変わった話の内容に、ミスティアはさらに怪訝な表情になるが、とりあえずはその単語の意味だけは理解できた。
 屋台持ちでその名を知らぬ者は居ないであろう、恐ろしく強く、そして極上の品を売る伝説の屋台。

「うん。私は見た事はないけど、何度も噂話で聞いた事があるよ。仕入れ先でも何度か耳にしたし、まず間違いはないと思うけどね。
 ……でもそれが今回の話と何の関係があるの?」
「その伝説の赤い屋台がね、つい数日前にこの川の穴を訪れていたらしいんだ」
「……へえー」
「何のためだと思う?」
「何のためって、屋台の営業か何かじゃないの?」

 そこでにとりは、より一層の真剣さを持って、いよいよその本題を口にする。

「ハンターオフィスで働いている知り合いから聞いたんだけどね、その赤い屋台――レッドドラゴンは、この川の穴に伝わる伝説を聞いて回っていたんだって」
「!! そ、それってもしかして……!」

 そこまで聞いたミスティアは、にとりが何を言おうとしているのか、うっすらとではあるが理解出来てきた。

「もしかしなくても洞窟の屋台の事だよ。
 ……私も、伝説が本当だとは思えない。だけど、あのレッドドラゴンが探しているとなったら、ちょっとは信憑性が出てこないかい?」

 伝説の屋台に、伝説の赤い屋台……ここに二つの伝説が重なった。それを馬鹿らしいと笑い飛ばすのは簡単だが、ミスティア達はすぐには笑い飛ばせなかったのである。
 何故なら、赤い屋台――レッドドラゴンの名は、そこまでの凄みがあったからである。

「……私、その洞窟に行ってみる!」
「みすちー、こんな話を持ち出しておいて今更なんだけど、所詮は伝説。どんな尾ひれがくっついているか分かったものじゃない。
 それに、洞窟に行って命を落とした者すらいるんだ。私は、この話をみすちーにして良かったか、今でも判別がつかない」
「何言ってるの! どうせ駄目で元々。行ってあれば良し、無くても諦めがつくってものさ!
 それに、今の私には時間が有り余っているからね。洞窟でアイテムの一つでも拾えたら御の字だよ!」
「みすちー、気をつけてね。
 もしみすちーに何かあったら、私はさっき話した事を後悔しながら生きていく事になる」
「大丈夫だよ。もし危ないと思ったらすぐに逃げてくるからさ。それに、今の私はとにかく何かしたい気分なんだよ!」

 たとえそれが望みの無い事だと分かっていても、モヤモヤとした後ろ向きな気分をふっきるため、そして前を見据えて行くためには『何か』が必要なんだ。

 ミスティアの顔に覇気が戻り、久しぶりの笑顔を見たにとりはひとまず安心したが、それは上辺だけのものだとも知っていた。
 本当に安心出来るのは、ミスティアが洞窟から無事に戻ってからの話だ。

 しかし、この時にとりはそれほど大きな心配はしていなかった。
 洞窟は調査され尽くし、それほどの危険性はないと判明されている。多分ミスティアは洞窟で何も見つけられずに帰ってくるだろうが、それが今のミスティアにとって必要な『儀式』なのだ。
 屋台なんて、働いてそのうちまた買えばよい。その為の『心の整理』を付けに行くのだから。

 赤い屋台の事は多少気にかかるが、ミスティアは指名手配されている訳でもないし、そこまで心配はいらないだろうと、にとりはその僅かな不安を胸の中に押し込んだのである。






―――――――― 05 伝説の赤い屋台 ――――――――




 その洞窟は、思ったより近くにあった。と言っても、歩いて三日はかかったが。
 空を飛んで見れば、にとりが言った洞窟らしきものはすぐに発見できた。だが、その数が多すぎて目的の洞窟を探すのに、それほどの日数を必要としてしまったのだ。

 何故か? 
 理由は簡単である。本来の洞窟はおそらく一つか二つ……せいぜいあっても三つぐらいだったのだろう。だが、屋台ハンター達があっちを掘り返し、こっちを掘り返ししているうちに『洞窟』が両手の指では数え切れない数になってしまったのだ。
 なんて欲深い連中だ。……私もだけど。

(本当に、あるんだろうか?)

 それだけが心配だった。これほどまでに調べ尽くされて「ない」と判断された洞窟を、私が今更調べる意味はあるのだろうか?
 それよりレンタル屋台でも借りて、地道に借金返済のために働いた方がいいのではないか。
 そんな考えが頭の中を、これまで何十回、何百回も横切っていった。

 だが、結局はこうして望みなどほとんどない屋台を探している。その自分の滑稽さに自嘲すると共に、自分もそんな連中と同じ穴のムジナなのだな、と改めて自覚する。

 ――もし屋台を発見出来、それが自分の物になったら?

 その呆れるほど愚かな思考が、甘い甘い餌となって目の前にぶら下がる。それを意識するたびに、長らく錆び付いていた、野心めいたものに火が点くような、不思議な興奮をミスティアは憶えるのだった。

「うだつの上がらない2ボス出の夜雀妖怪に、ようやく巡ってきたチャンスか…………それとも破滅の罠か?」

 一人呟いたミスティアの言葉に、答える者はいない。


 薄暗い洞窟内部には、あちこちに薬莢が転がり、壁に残っている銃弾やら爪痕やらの生々しい痕跡が、先人達の激闘を今に見る事が出来た。
 しかし、それらをじっくりと観察している暇などない。襲ってきたモンスターはミスティアの弾幕で吹き飛ばしされ、流れ弾が壁を薄く削っていく。
 今この瞬間も、ミスティアはそこへ新たな傷痕を加え、残していくのだから。

 この辺りのモンスターは本当に雑魚ばかりのようだ。私程度の妖怪でも難なく進める。

 と、安心しているまでもなく、新たな敵がワラワラと湧いてきた。
 しかしミスティアの放った弾幕を受けると、途端に激しく燃え上がる。カラッポリタンという名前なのに、何か詰まっているのだろうか?
 まあ、少なくとも本体部分はプラスチックか塩化ビニール製で、燃えやすそうではあるけれども。
 今はもう動かない数体のカラッポリタンは、黒い有毒臭を発生させながら燃え続け、たいまつのように洞窟内を明るく照らしている。

「これだけ進んでも、周りは岩と土ばかり……」

 もしかしたら、このまま何もない壁に突き当たってしまうのではないか、そんな不安が胸を締め付ける。
 そして、分岐点から行き止まりの壁にぶち当たるたびに、心が少しずつ折れていくのが自分でも理解できた。

 そして最後の分岐点から進んだ洞窟最深部。
 ……やはり、そこにも何もなかった。

 解ってはいた。そんなチャンスなどないと言う事を。解ってはいたが、完全に心の折れる音を聞いてしまったような気がした。

「は、馬鹿だよね私は。こうなるって解ってたのに、さ」

 片腕を地面について項垂れる。
 泣かない。泣くはずがない。だから、もう少しだけしたら、立ち上がって引き返そう。

 そう決意したミスティアが頭を上げた時だった。偶然目に付いた一つの足跡。その足跡に明らかな違和感……不審な点を見つけ出したのである。
 ミスティアは服が汚れる事も構わず、すぐさま地面に寝そべると幾つも残っている足跡を凝視し続けた。

「やはり……この足跡だけ『戻っていない』……!」

 それはミスティアが夜雀の妖怪であり、暗がりでも十分に夜目が効くという能力を有していなければ、発見すらで出来なかったであろう、僅かな痕跡だった。

 地面に残された何十かそれ以上の、“先駆者”達の足跡。
 それらは一様にこの行き止まりの壁で止まったり、周辺を探索したのだろう、右へ左へと歩き回った跡がくっきりと残っている。
 だが、そのどれもが結局は元来た道を戻っていくのだ。

 しかし、たった一つ、たった一つの足跡だけは『戻っていない』のである。別の足跡によって踏みつぶされたとか、そういうのとはまるで違うのだ。
 ミスティアは、その足跡の周辺を徹底的に調べまくったが、何も見つからない。

「しまった……こんな事なら、金属探知器でも持ってくるんだった」

 指を口に含み、微弱な風が吹いていないか調べてみたが何もない。
 ちなみにこの時気をつけていないと、長い爪で口の中を刺してしまう事もあるので注意が必要だ。

「くっ、せっかく手がかりが見つかったのに……それとも、やはりこれも間違いなのか?」

 ミスティアが地面を深く見つめ、岩肌を舐めるように観察している時、ある部分の地面と壁との間に何らかの妙な違和感を感知する。
 すぐに飛びついて良く見てみれば、地面から細いロープのようなものが、僅かだが露出していた。

「これは……配線!?」

 ロープではなかった。ゴム被覆で覆われたそれが、何らかの配線であると確認した時、ミスティアは激しく胸が高鳴るのを押さえきれなかった。先ほどまでの絶望感など嘘のように、体中が熱くなる。
 何故ならば、こうして岩肌の中から配線という人工物が出ているという事は、この自然に見える行き止まりそのものが人工物であるという決定的な証拠。
 その事に思い当たったミスティアは、配線の周囲を掘り返しまくった。途中、何本も爪が折れたが、まるで何かに取り憑かれたかのように掘り続ける。

「……操作盤、かな? こんな所に埋もれていたなんて……」

 岩と岩との僅かな隙間に、土に埋もれていたそれは、確かに何らかのスイッチだった。

「まだ生きてるかな?」

 スイッチには数字入力装置も付いていたが、もし何らかのセキュリティがかかっていた場合は、どうしようもない。ハッキング用の装置もないし、そもそもミスティアにはその技術もない。
 恐る恐る、そのスイッチを[ CLOSE ]から[ OPEN ]へと切り替える。

「何も起こらない?」

 ここまできてそれはないだろう、と思った瞬間だった。
 それまで何の変哲もなかった筈の岩壁が大きく開き、ミスティアが使っていた牽引式の屋台ならば、軽く二台以上は並んで通れる程の入り口が出現したのである。

「………………や、や、やったーー!!」

 思わず、飛び上がって小躍りする。今の瞬間を歌にして歌いたいぐらいだ。
 ミスティアは意気揚々と、その穴へと飛び込んで行く。

 そこは、今までの洞窟とはまるで違う世界だった。
 壁も地面も、明らかに手が加えられた人工物。おまけに、照明や空調設備(もちろん、今はもう作動していないが)まで設置されている。
 ミスティアは、まるでステップを踏むかのように軽い足取りで奥へと進んで行く。

「あれは……ま、まさか……」

 屋台は……屋台は本当にあったんだ!!

 ごくりと唾を飲み込む。視界に入ってきたそれは、確かに屋台に違いなかった。それも完全自走式の屋台。それが、あと数十メートル進めば私の手に入るのだ!

 ミスティアが駆け出そうとしたまさにその時、舞い上がる心に冷水でも浴びせられたかの如く、突き刺さるほどの鋭い殺気がミスティアの足を止まらせた。

「グルルルルルル……」

 低いうなり声。暗がりで光る二つの瞳。
 現れたそれは、『異形』だった。

 犬か虎か、それすらも解らない巨躯には、大きさだけでミスティアの身長と同じ程もある巨砲が載せられている。それは機関砲というよりも、もはや大砲に近い。

「――最後の最後で……これってないよ、ね?」

 後ずさりしながらも視線を落として良く見れば、その化け物の足元には、何体もの白骨が転がっている。それを見た時、なんて自分は馬鹿なんだろうとミスティアは激しく後悔した。

『戻ってくる足跡がなかった』という事は『戻って来られなかった』という事ではないか!

 今更ながら自分自身の迂闊さに気付き、自分で自分に罵声を浴びせたい気分になる。しかし、どれだけ自分を罵っても後悔しても、現状を打破する事は出来なかった。

 よもやこのような試練が待っているとは。楽に手に入るとは思っていなかったが、これは想定外にも程がありすぎる。

「グワァ――ッ!!」

 犬虎の化け物は、その巨体にも関わらず、俊敏な動きでミスティアへと肉薄する。
 間一髪でそれを避ける事に成功したミスティアは、狭い洞窟内であるにも関わらず背中の羽を羽ばたかせ、猛スピードで距離を取る。そして化け物が追い着いてくる前に、自分が出せる最高威力で弾幕を撃ち出した。

 弾幕は犬虎の化け物へと撃ち込まれると、猛烈な威力で爆発し、空気を揺さぶった。
 魔理沙や蓬莱人達ほどではないが、それでもいつも使っている『スペルカードルール』用の弾幕ではない、『殺す』事を前提とした弾幕である。
 それは、魅せる為の弾幕とは程遠い、地味ながら大きな爆発を引き起こし、巻き起こった熱風と煙の中に化け物を飲み込んでいく。

「よしっ!」

 小さくガッツポーズするミスティアだったが、砂塵の中に一瞬の閃光を確認した途端。

「ぐ、があっ!?」

 訳も判らず、ミスティアの身体は吹き飛ばされ、壁に強く叩きつけられた。

「が、……は、はひゅ、かひゅー……」

 これほどの激痛に襲われながらも、何故か言葉は出てこない。代わりに口から漏れるのは、ひゅー、ひゅー、という血の混じった空気のみ。

(……肺を、やられ、た)

 血を吐きながら、苦しそうに悶えるミスティアの目に入ってきたのは、ほとんど無傷状態の犬虎の化け物。
 ミスティアは化け物のタフネスさよりも、まずその背中にあった脅威に戦慄した。

(……しまった……奴には、背中の砲が……あったんだった……)

 その砲身は、地面に這い蹲り身動きの取れないミスティアへと向けられている。

(……終わった)

 ミスティアは静かに目を閉じ、覚悟を決めた。……いや、本当は覚悟なんて全然出来てなどいない。

(いやだ、死にたくない。手を伸ばせば、そこに屋台があるのに……まだ、やりたい事も行きたい場所も沢山あるのに……!)

 なんとか逃げようと試みるが、激痛以外の感覚が存在せず、背中の羽も動かない。

(思い上がった先にあったのは……破滅への道だった、か……)

 一筋の涙が零れ、ミスティアは地面へと突っ伏した。もはや頭を上げている力すらない。

(ごめん、にとり……)

 出せない言葉の代わりに、心の中で友人と決別する。
 まさか、友に自分の不始末という重大な責任を負わせて、先に逝く事になるとは思わなかった。ただ、それだけが悔しかった。

「グ……?」

 今まさに止めを刺そうとしていた犬虎の化け物は、まるで関心を失ったかのようにミスティアから視線を外した。
 その無機質なカメラような瞳が見つめる、洞窟への通路。

「?」

 それは、ミスティアの耳にも確かに聞こえてきた。幻聴などではない、キュラキュラという地響きは、確かに。

「グオオオオオオオ――ッ!!」

 明らかな警戒心を持って威嚇する化け物。
 同時に暗がりから現れた、もう一つの鉄の化け物。

 キャタピラの音は行軍の如く。
 砲身は獰猛な肉食獣の如く。
 赤い車体は炎の如く。
 ――それは、あまりにも無骨で――美しい戦闘屋台だった。


 化け物は一足飛びでその赤い戦台へと距離を詰め、背中のキャノンを連射した。

 だが、それらは装甲タイルの一枚すら剥がす事も敵わず、すべて空しく弾き返された。
 それでも化け物は、恐怖心などないかのように立ち向かって行く。その行為は、まさしく機械だった。

 そんな機械のような化け物に対峙している赤い戦台もまた、冷酷な機械の如く容赦をかけず主砲の照準を化け物へと固定する。
 次の瞬間、洞窟内を猛烈な爆発と閃光が蹂躙した。負傷のため耳を塞ぐ事が出来なかったミスティアは、その音に耳を痛めながらも、力を振り絞って顔を上げた。

 まるで、先ほどのミスティアとはまったくの正反対の光景。
 壁へと叩きつけられた化け物は、血の海の中で地面に倒れていた。

(すごい……!)

「大丈夫ですか!?」

(!?)

 その声は、聞き覚えがあった。

(こ、紅魔館の門番?)

 紅い髪、中華風の衣裳、そして龍の文字が入った帽子……それは、紅魔館で門番を努めている紅美鈴であった。ミスティア自身も、屋台で何度か顔を合わせているので間違いはないはずだ。

「ああ、肋骨が折れて肺を突き破っていますね。
 今、処置をしますので、もう少し辛抱してください」

 そんな事いちいち言わなくてもいいのに……と思いながらも、ミスティアは為すがままに身を委ねた。
 動きたくても動けないのだから仕方がない。

「いきますよ」
「が、あ――あうん? あ、こえ、が出せる?」

 美鈴がミスティアの胸部に触れると、何か温かいパワーのようなものが送り込まれる感触があり、少しずつではあるが痛みが引いてきて、声も出せるようになってきた。
 これが、聞いた事のある『気』というものなのだろうか。

 二、三分ほど美鈴の気の治療を受けたミスティアは、かなり楽になった。まだ多少痛みはあるが、呼吸の度に血を吐く事がなくなったのは実に嬉しい。

「……グルルルル」
「――!?」

 突然背後から聞こえた重圧。振り返れば、青い血なのかオイルのなかも解らない体液を滴らせながら、犬虎の化け物は立ち上がっていた。

 背中の砲は折れ曲がり、前足は砕けているが、それでも以前と何ら変わらない殺気を放っている。

 化け物が身に纏(まと)っていたプロテクターが剥がれ落ち、ガラン、という高い金属音が響き、小さく反響し続けた。
 どうやらこのプロテクターのせいで即死は免れたようであるが、たとえ頑丈なプロテクターに守られていたとはいえ、戦闘特化型屋台の搭載している大口径主砲の直撃を受けてなお生きているという、その頑強さぶりにミスティアは驚き、そしてある事実に気がつく。
 化け物は折れた足を庇う事もなく、そのまま悠然と歩いてくる。つまりあれは痛みを感じていないのだ。

 痛覚もなく、感情もなく。ただ戦い、破壊するためだけに作られた、生きた戦闘マシーン。すでにあれを作った人物など、この世に存在してはいないのだろう。
 それでもプログラム通りに死ぬまで命令を実行し続ける。
 仮に、仮にだ。今ここで私達が撃退されたとしよう。その場合、あの化け物はあの姿のまま命尽きるまで、ここを守護し続けるのだろうか?
 そこまで考えた時、ミスティアは僅かとはいえ同情とは違う、哀れみの念を憶えた。

「ミスティアさん。じっとしていてください」
「え!?」

 美鈴はミスティアから離れると、一足で何メートルもの距離を跳び越え、そこで『陣』を形成する。
 両足を肩幅まで広げ、化け物と相対するように構える姿はまさに守護者。そう、今の美鈴は背後のミスティアを守る番人なのだ。
 空気のような自然体でありながら、地面と同化したかのような力強さ。後ろ姿だけ見ていても、武術の心得がないミスティアですら、それが“何か凄いもの”という事だけはひしひしと伝わってくる。

「グオオオオオオオオ――ッッ!!」
「破――――ッ!!」

 化け物はその傷の深さからは考えられない程の敏捷さで、美鈴へと襲いかかる。
 だが、痛覚がないというのは時に悪影響を及ぼすのだ。前足が折れているというのに、それを微塵も意識せずに飛べば体勢が狂う。どれだけ早く動けても、それは武術の達人である美鈴にとって、大きな好機を与えるだけであった。

 ――音は、しなかった。

 美鈴は化け物の体当たりを難なく跳んで躱すと、素早く懐へ潜り込む。ひらりと、まるで舞踏のように舞い上がると、化け物への額へと手を当て――そこで、戦闘は終結した。

 口、鼻、眼球、耳。顔中のあらゆる箇所から、破裂した水風船のように血を吐いて倒れる化け物の目に、すでに生きている者が宿す輝きはない。

「凄い……」

 その光景に、ミスティアは思わず息を呑む。
 いつも魔理沙に門を突破されては、情けない姿を晒している美鈴とは想像もつかない姿がそこにあったからだ。

「いえ、本当はこれは禁じ手なんです。
 しかし、これ以外であれを倒す手段が見つからなかった。まだ私も修行不足ですね」

 息を整えながら、事もないように言う。

「これだけ強かったら、白黒魔法使いなんて簡単に追い返せるじゃない」
「あはは、魔理沙さんにあの技を使ったら、私が退治されてしまいますよ?」

 そう言って美鈴は、あははと笑う。その笑顔は、いつも屋台で見かけるその笑顔のままだ。

「ところでミスティアさんは大丈夫なのですか?」
「え、ええ。ある程度は痛みはなくなったし、こうして喋る事も出来るわ。
 まあちょっと頭痛とか酷いけど……」
「む。それはいけませんね。もうちょっと気で治療しましょう」

 そういうと美鈴は再度、ミスティアの背中に触れ意識を集中する。
 先ほどと同じく、温かい波動のような不思議な感覚を覚えながら、ミスティアはその“治療”を受け続けた。

「ところでミスティアさんは何故ここに居たのですか?」

“気”を送りながらも、美鈴はミスティアへと尋ねてくる。

「んー、門番さんとそう変わらない理由だと思うけど……」
「という事は、やはり屋台を探して?」
「うん……結局は情けない事になっちゃったけどね」
「そうですね。無茶もいい所ですよ。
 運良く私が来なかったら……来たとしても到着があと数分遅かったら、私は泣きながらお墓を作らなければなりませんでした」
「えっ? 泣いて、くれるんだ」

 美鈴の意外な言葉に、ミスティアは少し目を丸くする。

「ええ。いつも行く八目鰻が食べられなくなったら、悲しいですからね」
「泣くってそこですか!?」
「あはは、冗談ですよ。
 ……でもミスティアさん。貴女は自分は一人だけだと思っているかもしれませんが、決してそうではありません。私のように、貴女の事を気に止めている存在は沢山居るんですからね」
「――――そ、そうかしら……」

 ミスティアは、美鈴の言葉に何と返して良いか解らず、何も言えなくなった。
 屋台業務以外の事で、面と向かって率直に褒められる事があまりなかったミスティアは、こういった時の反応に慣れていないのだ。

「さて、もう良いですよ。
 あくまで応急的な措置ですが、無理をしなければ問題なく歩いたり出来る筈です」
「うん、ありがとう。門番さん」
「でも、屋台は別ですからね?」
「……うーん。でも仕方がないわ。助けて貰ったんだから」

 命があっただけでも拾い物なのだ。そんな命の恩人に対して、真横から屋台をかっさらう事なんて出来はしない。
 ただし、あれだけの強さを誇る美鈴に対して、ミスティアの力ではそんな暴挙も許されないのだが。

「うーん、これは……また……何というか……」

 美鈴はそんなミスティアの前で、置かれている屋台の周囲を回って観察したり、運転席に座って何かを確認していたりしたが、そこから降りてきた後に出たのは大きな溜息だった。

「……はあ。
 あれほど強力なガーディアンが護っていたので、どんなものかと期待してみれば、それほど大した事はありませんね……」

 そう言った後、美鈴はミスティアに向き直り、大きく声をかけた。

「ミスティアさん」
「え? はい?」
「おめでとうございます! あの屋台はミスティアさんの物です!」
「――――――!?」

 沈黙。

 ミスティアは自分の鳥耳を疑った。美鈴の言葉の持つ意味があまりに重大すぎて、思考回路がついていかなかったのである。
 それほど、屋台を無償で手に入れられるという意味と、屋台をタダで手放すという意味は重すぎるのだった。
 しかし、当の美鈴はにこにこと微笑んだままである。

「えええ!?」

 ようやく出た言葉は、何の捻りもない驚きの叫びだった。

「あれ? 嬉しくないんですか?」
「い、いや嬉しいけど。滅茶苦茶嬉しいけど!
 でもどうして? 門番さんも屋台を探していたんでしょ?」
「私が探していたのは、戦闘屋台です。それも今の奴よりもずっと強力な奴を、ね」

 戦台? なんでそんなのを探しているんだろう?
 というか、今の門番の乗っている戦台以上の屋台なんて、そうそうないと思うけれど。

「ですので、戦闘屋台以外の屋台は特に目的ではなかったのです。だからあの屋台は、ミスティアさんが好きにしても良いですよ?」
「や」
「や?」
「やった――!! 嬉しいです!! ありがとう門番さん!」

 嬉しさの余り、何度も飛び上がるミスティア。耳と羽もそれに合わせてぴこぴこと連動する。

「あ、そんなに大声を出すと身体に障りますよ?」
「あいたたたた……」

 美鈴の注意も少し遅かったようで、忘れていた胸の痛みが再発すると、ミスティアは胸を押さえてしゃがみ込んだ。慌てて美鈴が側へと寄ってくると、その背をさする。

「ほら、言わない事ではありません。大丈夫ですか?」
「う、うん大丈夫。こんなの、嬉しさに比べたらちっぽけなものだよ」

 立ち上がったミスティアは、体に負担をかけない範囲で喜びを表す。本当は、馬鹿みたいに空中で三回転くらいしたい気分だったが流石に自重する。
 その様子を苦笑しながら見ていた美鈴だったが、置かれている屋台のある部分へと、その鋭い視線を止めた。

「おや? この副砲は使い物になりそうですね。すいませんが、これだけは頂きますが宜しいですか?」
「いや、門番さんは命の恩人だし、私が文句を言える筋合いはないよ。副砲でも何でも持って行って良いよ」
「いやー、すいません。こちらとしても手ぶらで帰る訳にはいかない理由がありまして……」
「もしかしてそれって、吸血鬼のお嬢様が絡んでる?」
「もしかしなくても絡んでますよ」
「あー、それだったら大変だよね……」

「いつもの事ですから」と、はにかみながらも美鈴は片手で機銃を難なく取り外すと、そのままヒョイと自分の屋台へと載せ替えた。
 凄い……力もそうだけど、あの手慣れた感。流石は伝説と恐れられる最強の屋台主の一人、レッドドラゴンだ。普段の勤務態度や、私の屋台での姿からは想像もつかない。

「ところでミスティアさん、一つお願いがあります」
「お願い?」
「はい。私がレッドドラゴンだという事は、しばらく伏せておいて欲しいのです」
「え、なんで?」
「まあ、こちらにも色々と事情がありまして」
「うーん、別にいいけど、門番だって屋台持ちなら営業ぐらいするんでしょ?
 たとえ私が言わなくても、バレると思うけどなぁ……」
「いえ、私は顧客のみの営業で、人里でこれを使って屋台を開いた事はありません」
「あ、そうだったんだ。
 そう言えばレッドドラゴンの噂話は良く聞くけど、実際に屋台で食べたって人は聞かないな……」
「基本的に、お弁当などを作って特定の業者に納入していますから。
 後は要予約制でしょうか。ただしお嬢様のご機嫌次第なので、予約しても必ず食べられると決まった訳ではありませんが」
「うーん、わかったよ。正体の事は誰にも言わないよ」
「ありがとうございます」


 洞窟内で見つけた屋台は、当然の事ながら燃料もなく、バッテリーも上がった状態だった。長い間放置されていたのだから、予想していた事だし仕方がない。
 Cユニットはアナログ式のメーター類に、これまたトグルスイッチがずらりと並んでいるレトロな代物だが、こういうものはシンプルな分、現在の物より長持ちしたりする。ただ性能が低いだけだ。
 武装は今と規格が違いそうな旧式の短身砲が載っていたが、これも当然の如く残弾などない。仮にあったとしても、これだけの古い弾薬を使うのは怖くて出来ないだろう。

「これだけあれば、川の穴までは持つでしょう」
「本当に何から何まで、お礼の言葉もないよ」

 燃料については、美鈴が予備燃料を別けてくれた。
 バッテリーは、屋台が置かれていた近くに積み上げられていた、様々な工具類の中に使えそうな物があった為、遠慮無く拝借させて貰った。

 その他にも、屋台の交換部品やショットガンなどの武器もあったが、積もった埃の下から現れたそれらには盛大に錆が浮かんでおり、持ち出す事は見送った。
 そんな物なくても、にとりならば何とかしてくれるだろう。もし必要になったのなら、また来ればいいだけだし。なにせあの恐ろしい“番人”はもう居ない。
 ここは正真正銘、“何もない普通の洞窟”になったのだ。


「あー、生きてここから出られるなんて……しかも屋台まで見つけて帰れるなんて、思わなかったよ」
「そうですね。
 でも、これからは気をつけて下さい。屋台はあくまで屋台。どれだけ屋台を改造しても、それは屋台の性能の一つにしか過ぎません。
 それで自分が強くなったと勘違いしては本末転倒です。あくまで、屋台の力を引き出すのは持ち手の力量なのですから」

 実に重い言葉。伝説の屋台主が言う言葉には深い重みがある。レッドドラゴン直々にありがたい言葉をかけて貰えるのは、一端の屋台主として光栄の極みなのだが、それがあの門番なのだと思うと、どこか可笑しくもあった。

「――うん。わかったよ。特に今回は骨身に染みてね」

 今回は運が良かっただけ。
 もうこんな無茶はしないでおこう。二度目の“幸運”があるとも思えないし、それに期待する程自分の鳥頭は悪くない筈だ。
 レティから学んだ事、そしてレッドドラゴンから学んだ事。それはミスティアにとって、大きな大きな成長だった。

「それを理解しているのなら、私からこれ以上言う事はありません。あとは、その屋台をどう使うかはミスティアさん次第です」
「うん!」

 ミスティアの、芯から発せられた返事を満足に確認した美鈴は、その進行方向をミスティアの向かう川の穴とは違う方向へと向けた。

「……さて。私はこれで失礼させてもらいますよ」
「紅魔館へ帰るの?」
「そうですね……ここに私の探していた屋台が無かった以上、一度紅魔館へ戻って体勢を立て直すつもりです。
 それに、私の本分は門番ですから」

 そう言って美鈴は屋台の運転席へと消える。

「それでは、また。
 今度会う時は、私は一介の門番ですから。八目鰻の再会、楽しみにしていますよ」
「うん、また今度。屋台を開いたら、絶対に来てね! 必ずお礼するから!」

 大きく手を振るミスティアへの返答は、一つのクラクション。
 山々に木霊したクラクションの音が聞こえなくなった時、その赤い屋台は限りなく遠く、小さくなっていた。



紅龍
 屋台主:紅美鈴
 装甲タイル:2850/2850枚
 シャシー:74式
 主砲:150_キャノン
 副砲:15_機銃
 Cユニット:ダロス1000
 エンジン:ロケットカルメン
 SE:バーナードラゴン
 道具1:野外炊具1号
 道具2:換気装置
 道具3:アースチェイン



「♪なじかは知らねど 心わびて
 昔の伝説(つたえ)は そぞろ身にしむ
 寂しく暮れゆく ラインの流れ
 入り日に山々 あかく映える

 麗し乙女の 巌に立ちて
 黄金の櫛とり 髪の乱れを
 梳きつつ口ずさぶ 歌の声の
 くすしき魔力(ちから)に 魂(たま)も迷う

 漕ぎゆく舟びと 歌に憧れ
 岩根も見やらず 仰げばやがて
 浪間に沈むる 人も舟も
 くすしき魔歌(まがうた) 謡うローレライ♪」

 屋台を手に入れたミスティアが上機嫌で鼻歌を歌いながら屋台を運転し、河童の集落付近まで来た時だった。街の外壁よりさらに外側で、にとりがただ一人突っ立って、こちらと呆然と眺めている。

「みすちー!!」
「あ、あれ? にとり? なんでこんな所に居るの?」
「なんでって……何日間も帰って来ないんだもん、心配するに決まってるでしょ!!」

 そう言って怒鳴りつけるにとりの目には、涙が浮かんでいた。

「私が余計な事を教えたばかりに、みすちーが無茶して……どこかで大怪我したり……もう帰って来ないんじゃないかって、本当に心配だったんだから……!」
「にとり……心配かけてごめんね」
「ううん、みすちーがこうして無事に帰って来てくれただけで嬉しいよ!」

 ……もしかして、にとりはずっとこんな風に待っていてくれたのだろうか。こんな寂しい街の外で。
 そう考えると、無鉄砲に飛び出していった自分が、如何に他人に心配をかけていたのかが今更ながらに身に染みた。屋台を失っていたとはいえ、半ば自暴自棄とも言えるその行動は、全く配慮の足りない軽率なものだったからだ。
 そんな自分を、にとりはこうして待っていてくれたんだ!

「みすちー!」
「にとりー!」

 二人は知らず互いに駆け出していき、互いに強く抱擁……する事もなく、にとりはミスティアの横を通り過ぎた。

 あるぇー!? なんで私スルーされてるの?
 というか今の流れからいくと、ここで抱き合って再会を喜び合うのがセオリーじゃないの? これじゃあ、私が間抜けじゃないの!?
 そんなミスティアの視線などまるで気にもせず、にとりは一人、屋台の周りを凄い勢いで回ったり、ボディを触ったりさすったりして、恍惚の笑顔を浮かべている。

「凄い!! 完全な自走式屋台!! なんて改造のし甲斐のある大きな車体!!
 うふ。うふふふ。
 はぁはぁ……は、早くこのコの内側を弄ってみたいよ!!」
「……………………」

 うわぁ。この場合、友人としてすぐ注意した方が良いのかな。それとも幸福な時間を邪魔しないであげるのが正しいのかな。
 あ、頬ずりまでしちゃってるよ。どうしよう、これ以上行為がエスカレートしたら、友人関係を構築し続ける自信がないよ……。

 しばらくして屋台から離れたにとりは、「えへへ、恥ずかしい所見せちゃったなぁ」なんて照れながら笑っていたけど、私の中でにとりに対するイメージが変わったから。いや口に出さないけど。


 その後、屋台を手に入れて幸せなミスティアと、屋台を改造できる事が幸せなにとりの二人は、早速ガレージへと飛んで戻ると、一息つく間もなくすぐに改造計画を話し合う。

「じゃあ、以前の大破した屋台は、使える所以外は全部屑鉄屋に売るとして……みすちーが持ってきた、この1100円の予算は全部、こいつの改造とパーツ購入代に当てるという事でいいよね?」
「うん、いいよ。
 ――あ、でも当面の生活費は残しといてね」
「あ、そっか」
「ちょっとにとり、屋台の事に夢中になるのはいいけど、中の人の事もちゃんと考えてよね」

 失敗失敗、などと頭をぽりぽりとかいているにとりだったが、もし私が指摘しなかったら予算を全部注ぎ込むつもりだったのだろうか?
 指摘しておいてよかった。せっかく屋台を手に入れたのに、飲まず食わずじゃ以前と同じ事だしね。

「……えーと。以前の屋台の、残り5回分のローンを引いて……みすちーの希望通り、シャシーの徹底的な防御力強化、と。
 ところで、特殊弾倉はどうするの? このシャシーじゃ4発ぐらいしか積めないと思うけど、10発以上は積めるようにしとく?」
「うーん、そんな特殊弾なんて使う事はないと思うけど……」
「そう? じゃあ8発ぐらいにしとく?」
「……改造前提なのね。……まあ、あって悪い物じゃないし、それだけあってもいいかな」
「よしきた。
 防御力は、私の見立てでは200ぐらいは軽くいくと思うんだけど、どこまで上げる?」
「最初のうちは、150ぐらいあればいいと思うけど……」

「まあ、妥当な所だね。それだけあれば、川の穴から人里近辺の雑魚妖怪の弾幕なんかじゃ、ほとんどダメージを受けないくらいにはなるよ」
「へえー」

 もしかしてレティもその辺りまで考えていたのだろうか? だとしたら大した策士だ。

「Cユニットは流石に交換するけど、エンジンは最初から載っているのをそのまま使うか。もちろんオーバーホールはするけど、結構な掘り出し物だよ。
 今でも部品が流通しているくらいだから、おそらく当時の最新型か、それに準じるタイプだろうね。
 新品で買ったら、2500円ぐらいはするよ。これだけで」
「2500円!? エンジンだけで!?」

 ていうか、エンジンだけで牽引式屋台とほぼ同額って、どんだけなのよ!?

「そう、だから自走式屋台は憧れの的なんだ。それをみすちーは手に入れちゃったんだよ」

 それを聞いたミスティアは、今更ながら体が震えてきた。
 エンジンだけで何千円とか、桁が違いすぎる。もし屋台本体を買おうとしたら、いくら位のお金を用意しなければいけなくなるのだろう?
 しかもそんな高額な代物を、この自分が手にしている……。もしこれで、いきなり事故って大破させたりしたら、軽く心臓麻痺でも起こせそうだ。

「主砲と副砲は流石に中古だけど、以前と違って予算に余裕が出来たからね。中古でもかなり質の良い品を取り寄せる事が出来そうだよ」

 中古品のカタログを見ながら、にとりは電卓を叩いていく。

「う〜ん。エンジンやシャシーに比べて、武装がちょっと非力だけど、予算内で出来るベターな事かな」
「まあ、私はあくまでも屋台を求めているんであって、戦台じゃないんだからこれでいいけどね」
「これで各種改修費は、全部合計で900Gって所だね」
「工賃とかはいいの?」
「何言ってるの、みすちーの晴れの屋台じゃないか、そんなのサービスだよ!」
「にとり……」
「その代わり、新しいSEの試作品を積んでおくから、ぜひ試してみてよ」
「………………」

 ま、まあ、にとりはエンジニアだからね。研究費がなかったら生活も苦しいだろうし。
 あれ? それなら工賃とればいいのに。

 いや……ここはあまり深く考えないようにしよう。
 にとりは親友、にとりは親友、にとりは親友。よし、にとりの事は信じるぞ!

「それじゃあ私は、屋台が仕上がるまでホテルに泊まっているから」
「え? うちに泊まっていけばいいじゃない?」
「そんな、にとりに迷惑ばかりかけられないよ。それに私が居ると集中出来ないかもしれないし」
「うーん、まあみすちーがそう言うなら」


 よーし、頑張るぞー、と腕まくりしているにとりに声援と期待を送ったミスティアは、ガレージを後にしたのち。川の穴にある宿泊街へと足を向ける。
 流石は幻想郷随一の屋台の聖地、屋台持ちの為の宿泊施設や娯楽施設が数多く立ち並ぶ。その中には当然のように、屋台も数多く存在する。屋台のための屋台というのも、中々に面白い風景だ。

 ミスティアはこれら立ち並んでいるホテルの中から、無難そうなホテルを選び泊まる事にした。
 部屋のランクには『松』『竹』『梅』と三種類あるが、中間の『竹』の部屋にする。本当は一番安い部屋で十分だったのだが、流石に見ず知らずの他人と雑魚寝するのは気が引けたからだ。
 しかし、洞窟で倒してきた雑魚妖怪共の獲得金額を合計すれば、三日ほどは寝て暮らせる。その間に屋台の整備も終了するだろう。


「久しぶりのベッドの上だあ!」

 部屋にはいると、ミスティアはまずベッドへと飛び乗った。

「木の上もいいけど、ふかふかのベッドもいいよ」

 部屋のランクから言って、ベッド自体はそう上物ではない量産品だったが、やや固めのスプリングがぽよんと反発すると、そのありふれた懐かしさに変な感動すら憶える。

「いつか、遠慮無く『松』の部屋に泊まれる身分にはなりたいものだよ」

 久しぶりに入浴し、久しぶりに着替え、久しぶりにレストランで食事を取ったミスティアは幸せを実感していた。
 特に高い部屋に泊まった訳でも、高い食事を食べた訳でもないのに、これだけ幸せな気分に浸れる自分の経済性に苦笑しながらも、考えるのは手に入れた屋台の事ばかり。知らず、顔がにやけてしまう。

 だが、それも数日の話。
 数日後に屋台が出来上がれば、また屋台主としての厳しくも楽しい生活が始まるのだ。それまでの一時、文字通り“羽を伸ばさせて”もらう事としよう。
 ミスティアは屋台で営業する自分の姿に思いを馳せながら、その夜眠りについた。


 そして次の日の昼頃、ホテルのランチメニューを堪能していたミスティアの部屋へと、油で汚れた服もそのままのにとりが駆け込んで来て、大いにミスティアを驚かせた。

「出来たよ!」
「早いよ!?
 というか、まだ1日しか経っていないよ!?」
「自走式の屋台なんていじくれるの、もの凄い久しぶりでさー、嬉しくて完徹だよ!」

 両目の下にくっきりと隈を作っているにとりは、それでも疲労など見せずに嬉しそうに笑った。

「そ、それで出来はどう……?」
「バッチリさ!」

 親指をグッっと突き出すにとりは、やはり徹夜明けのテンションなのだろう。見ていて少し痛々しかった。

「あ、そうそう。砲弾と装甲タイルは、私からのプレゼントだよ」
「そこまでして貰って、何だか悪いよ」
「良いって事よ。選別だと思えば」

 にとり……やはり私は誤解していたみたいだ。やはりにとりは最高の親友だよ。

「それで、新しく積んだSEなんだけど、ランチャーは以前のをそのまま使ってるけど中身は別物だよ」

 あれ? 何だか話が変な方向へと向かい始めたぞ?

「以前のは威力や性能は抜群だけど、値段が高すぎた。そこで誘導装置を慣性誘導のみとして、内部に子爆弾を沢山詰め込んだ広範囲鎮圧兵器にしてみたんだ。
 縦300メートル、幅250メートル位を一掃出来ちゃうよ!」
「またそんな大袈裟な兵器を……私はハンターじゃないってのに……」

 というか、そんな物騒な兵器を笑顔で騙るにとりは、どこの死の商人なんですか?

「まあまあ、SEの試射結果を首を長くして待ってるよ。それじゃ!」

 そう言ってにとりはホテルを後にした。ふらふらとした足取りで駆けて行くにとりを眺めながら、ミスティアは心の中で最大の感謝と賛辞を贈る。

「まったく……でもありがとう、にとり。
 私はこれで以前通り、いや以前以上の屋台持ちとして頑張って行けるよ」

 洞窟の中で見つけた時とは違い、綺麗に磨き抜かれた屋台は太陽光を反射し、目映く輝いて見える。
 その輝きは、ミスティアにとってどんな宝石よりも美しく見えた。
 だが、その宝石を生かすも殺すも自分次第なのだ。ミスティアは屋台のハンドルを握りしめながら、新しい屋台に相応しい屋台主になってやるぞ、と固く誓った。
 そして、にとりを家まで送ってやればよかったな、と少し反省した。



新夜雀号
 屋台主:ミスティア・ローレライ
 装甲タイル:600/750枚
 シャシー:トラック(守備力150・特殊弾倉8発)
 主砲:57_砲
 副砲:9.7_機銃
 Cユニット:スパシーボU
 エンジン:ブル
 SE:ATMミサイル改
 道具:汎用調理台






―――――――― 06 お大尽!! ――――――――




 ミスティアが自走式屋台を手に入れてから、今日でちょうど一週間。
 人里などで屋台業を仮営業として再開した時は、物珍しさから長蛇の列がつき、自前の屋台が持てなかったり、牽引式の屋台で働いていたりする人妖の屋台持ちからパルパルされたりした。

 噂は噂を呼び、この一週間の間、里の話題はミスティアの屋台で持ちきりとなる。
 しかし、あくまでも仮営業は仮営業。今日から晴れて本営業再開なのである。

 博麗神社。
 この記念すべき日、神社で行われる宴会でミスティアは満を持して、自分の屋台で参加したのだ。

「ほう、これが噂の『伝説の屋台』ですか。実に興味深い」

 天狗の記者である射命丸文が、営業している屋台の様子をパシャパシャと撮影していく。

 ミスティアが自分の屋台を見つけ出したという事実は、まだ発見されていない屋台があるかもしれない、という願望や欲望と見事にマッチングし、幻想郷に再び『屋台探しブーム』を巻き起こしてしまった。
 自身を振り返ってみてもシャレにならないくらい危険だったので、あまりそういう無茶な行動は自重して欲しいが、自分自身が無鉄砲・無計画な行動の中で、偶然手に入れたものだから強くは主張出来ない。

「うーん、伝説っていう程のものじゃないかもしれないけどね」
「それでミスティアさん。聞いた話では、貴女はあの生ける伝説の屋台、レッドドラゴンと会ったと聞いていますが、本当なんですか?」
「え!? どこでその話を!?」
「ふふん、天狗の情報網を甘く見ないで欲しいですね。それでレッドドラゴンとはどんな人だったのですか? 多分、人ではなくて妖怪だと思いますが」
「そんなに凄い情報網なら、とっくに正体なんて掴めてる筈じゃないの?」
「くっ、痛い所を突いてきますね。ああそうですよ解っていませんよ、悪いですか?」

 逆ギレ!? 全く、記者としてその態度はどうよ。
 しかし、いくらあの門番が腕の立つ屋台主であろうと、その正体をいつまでも隠してはいられないと思うけれど……天狗にすらその正体を掴めさせないとは、何か重大なカラクリがあるのだろうか。
 もしかしたら、主である吸血鬼の片割れが運命操作でもしているのかも知れない。

「そんな事、言う訳ないよ。命の恩人から口止めされてるしね」
「そこをなんとかなりませんか?」
「無理、他を当たって頂戴」
「取引という選択肢は?」
「はいはい、後ろにお客さんが並んできたでしょ? 何か買わないのなら、早くどいてくれませんかね」
「私には取材する正当な権利があるのですよ? そのうちきっと尻尾を掴んで見せます!
 あと鰻の蒲焼きを一本!」

 買うのかよ!? 毎度あり!


「へー、これが自走式屋台……なんだか私も欲しくなってきたな」
「あら? 日々の寝場所にも苦労している貴女が、そんな高級な代物を買える筈がなくて?」

 うわ〜、またこの二人が一緒に居るよ。

 ミスティアの屋台を興味深そうに見つめる妹紅と、その妹紅を挑発するかのように見つめる輝夜。
 睨み合う二人の側で、それぞれの付添人である慧音や永琳は、事が発展しないようにさりげなく互いの立ち位置を視線で確認し合っている。

 そこまでするぐらいなら、もっと根本的に解決策を話し合うなりして欲しいよ。
 ていうかさ、率直な疑問なんだけど、なんでそこまで仲が悪いのにそこまで同じ行動を取る訳?

 しかし、ここは人里外れのあぜ道でもなければ雑木林の中でもない、博麗神社のど真ん中。
 もし宴会中に、こんな所であの夜のような弾幕ごっこでもやらかそうものなら、どんな恐ろしい事になるか分かったものじゃない。
 この二人もそこだけは解っているから、とりあえず自重しているようだ。いつもこうなら良いのに。

「うるさいな! 寝る場所ぐらいちゃんとあるわよ! ……それに言ってみただけなんだからいいじゃないか! そもそもお前に関係ないだろ」
「ふふふ。貧乏人はせいぜいひがんでいなさい」
「なんだと?」

 歯ぎしりする妹紅を尻目に、輝夜はほんの少し空中へと浮かび上がると、美しく響き渡る声で宣言した。

「さあ、皆の衆。今宵は我が永遠亭の奢りよ!
 好きなだけ飲み、食べ、唄い、そしてこの私を称えなさい!」

 あれだけの喧噪が、一瞬のうちに無音になる。そしてまた一瞬後、境内の各地から盛大な歓声が沸き起こる。

「うおー!」
「輝夜さん最高ー!」
「ひゅーひゅー!」
「ゴチっす!」
「よっ、太っp……ぐぼっ!!
 ほ、褒めただけなの……に……」

 そこら中で沸き上がる歓声。
 人妖は驚喜しながら、屋台へと突進してくる。

「八目鰻四人前頼む!」
「こっちは鰻の蒲焼き三人前だ!」
「焼酎丸ごとくれ!」
「蒲焼き五人分!」
「酒なら何でもいい!」
「鰻の唐揚げ、あるだけ頂戴!」

 う、うわっ、何この人妖の津波!?
 嬉しいけど大変っ!! とてもじゃないけど、注文が間に合わないよ!!

 押しかけた人妖の対応に四苦八苦していたミスティアだったが、そこへ思いも寄らぬ妖怪から声が掛かる。

「ちょっとそこの迷える夜雀さん。忙しいなら、私が手伝ってあげてもいいけど?」
「ほ、本当!?」
「時給は20円で」
「ちょ、なにその超ぼったくり!! 人足一日分の給料と、ほぼ同額じゃないのよ!?」
「いやならいいよ、別に。一人で頑張って頂戴〜」
「くっ、時給12円でどう?」
「おや? もっとお客が来るようだけど? まあ私には関係ない話だったわね」
「あ! ちょ、ちょっとじゃあ15円!」
「う〜ん、もうちょっと頑張ってくれたら、私も頑張れるんだけどな〜?」

 何をだよ!? 本当にこの詐欺兎は、人の足元を見るのが上手いな。

「じゅ、17円……!」
「オーケー、それでいいよ。これで契約成立だからね!
 まあ値段の分は頑張るから安心しなって。とりあえず、この出来上がった蒲焼きを配って来ればいいのね?」

 指でOKマークを作った因幡てゐは、何処からか取り出したエプロンを身に纏い、そのまま臨時の店員となった。
 これで期待通りに働かなかったら、帰り道に鳥目にしてやろうとミスティアは誓ったが、予想に反して(というかお金出してるのだから当然なのだが)てゐはそれなりの働きを見せ、何とかミスティアも注文をそれほど遅滞させる事なく、最後まで捌ききる事が出来た。
 すでにミスティアがこの日のためと、多めに用意してきた鰻も酒も全て売り尽くされ、人妖は境内のそこかしこで酒を飲み合い、語り合っている。

 そんな中、凄くいい笑顔をしたてゐが、両手で抱えられるほどの小型賽銭箱を持ち、ミスティアの元へとやってきた。
 何でそんな「お互い、やり遂げたな」みたいな顔してるんだよ。
 ミスティアは二時間分の時給を入れながらてゐの態度に毒づくが、実際にてゐが居なければ自分一人では到底対応しきれなかったため、文句は言い出せないのがもどかしい。
 
 くそう、あれだけ働いたのに、儲けのうち何分の一かは永遠亭に還元されるんじゃないか。正確にはあの詐欺兎にだけど……。
 というか、これだけ人数が居て手伝ってくれたのは、高額な時給を提示した詐欺兎だけとは……。


「なるほど……これは便利そうね……」

 そんな賑やかな光景を背にして、アリスがミスティアの屋台を見ては、そう呟いていた。
 その眼差しは真剣であり、まさか本当に屋台業に移行するつもりなのだろうか。

「人気のようね」
「あ、紅白巫女」
「紅白じゃない巫女って何よ。巫女の衣裳は紅白って相場が決まっているのよ」
「山の上の巫女は青白だよ?」
「あれは風祝よ」
「ふーん」
「ふーんじゃない。私は霊夢よ、鳥頭。見た目や特徴ではなく、名前で判別しなさいよ」
「いやあ、人の名前を覚えるのが大変で」
「そこが鳥頭だって言ってるのよ。次会った時に忘れていたら、焼き串一本貰うわよ」
「ちょ、なにその横暴!?」

 これが強者のみに与えられた“特権”か……私も死ぬまでに、一度で良いから何らかの特権を発動してみたいものだ。

「ところで何の用?」
「まあ、あんたのおかげでこうしてタダ飯にありつけたし、賽銭も入れてくれた人がいるみたいだから、一応礼の一言ぐらい言っておこうと思ったのよ」
「それはどうも……でも、それならあの永遠亭の姫さんにお礼を言うべきじゃないの?」
「今は嫌。酔っぱらった上に、鼻が天狗並みに伸びきっている奴に、礼なんか言ってやらない」
「あ、まあ、確かにあれはちょっとないよね」

 境内の中心では、観衆から煽てられた輝夜が「苦しゅうない、苦しゅうない」などと有頂天になっていた。
 その様子をもう一人の蓬莱人、妹紅は実に醒めた目で見つめている。


「そうそう、これをあげるわ」
「これは?」
「見て解らないの? お守りよ」
「いや、解るけど……なんで私に?」

 あの博麗霊夢が贈り物!?
 なんという異変なのだろうか、それとも彼女も随分酔っているのだろうか。

「要らないなら返してもらってもいいのよ? いいから貰っておけばいいんじゃない?」
「そうね。じゃあありがたく貰っておくわ」

 しかしくれるというのだから、ありがたく(?)貰う事にしよう。まさか後で返せとか言わないだろうな?
 ミスティアは、屋台を手に入れた事に次いで、今年二番目の奇跡に首を捻りながらも、貰ったお守りを屋台の運転席に吊した。

 ぷらぷらとぶら下がるお守りを見ながら、ミスティアは大きく背伸びした。
 境内ではまだまだ宴会が続いており、この分では日付が変わっても馬鹿騒ぎは終わらないだろう。

 運転席に座りながら、せめて自分用に酒の一杯くらいは残しておくべきだったな、と思っていると突然運転席の窓硝子がコンコンと叩かれる。
 そこには、酒瓶を持ったにとりの姿。

 屋台から降りたミスティアは、すでに相当酔っぱらっている人妖達の輪の中へ、遅ればせながらも加わった。
 にとりに手を引かれ、向かった先にはチルノたちが待っていた。おめでとう、と手を叩くレティや大妖精に迎え入れられながら、ミスティアは自慢の武勇伝を歌にする。

 宴会のかがり火と満天の星空の元、毎日のように手入れされているミスティアの屋台は、昼間とは違った輝きを照り返していた。







―――――――― 終 ――――――――







※ にとりの初心者に優しい用語解説 ※

アクティブホーミング式の誘導ミサイル
 簡単に言うと、ミサイル自体がレーダー波を発信しながら目標を捕捉・追尾する能力を持ったミサイルの事だよ! 発射母体がミサイルを誘導しなくて済むからとっても便利だけど、その分値段が高かったりミサイル本体が大型化してしまうといった問題もあるんだ。


MRAP
 もの凄くかいつまんで言うなら、『とーっても地雷(や設置型爆弾)に強い装甲車両』の意味なんだな〜、ぐらいに思ってもらっても差し支えないよ! 細かい事に難癖つけるのは軍オタだけだから、普通ならこれだけの認識で構わないよ。


リアクティブ・アーマー&ERV
 作中の説明と、基本的な概念は同じだよ! 実はERVというのは、リアクティブ・アーマーの中の一種類で、リアクティブ・アーマーには幾つかの種類が存在するよ!


チャフ・フレア・ディスペンサー
 チャフとは、薄く切ったアルミ箔やアルミ蒸着させたプラスチックや樹脂、ワイヤーなどをばらまいて敵レーダーを攪乱させるECM(電子戦)の一種で、フレアとは高熱の熱源を放出して赤外線(熱源)誘導のミサイルなどを回避する為の欺瞞装置の一種だよ。チャフ・フレア・ディスペンサーとは、それらを射出させる為の機械の事を指すんだ。


装甲タイル
 パロ元のゲームを知らない人に説明しておくと、戦車(作中では屋台)のHPみたいなもの。人間じゃないから0になっても死なないけど、パーツが破損しやすくなるんだ! パーツが破損して【大破】状態になったら、行動不能になったり、強制的に乗り物から降ろされてしまったりする事もあるから、要注意だよ。


C(コントロール)ユニット
 戦車(屋台)をコントロールするためのシステムユニット。これだけでほとんど説明不要だね!


主砲・副砲・SE
 作品を読んで大まかなイメージが掴めたと思うけど、その認識でだいたい合っていると思うよ。




戻る